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星の道標


★ ザ・スズナリ×下北沢商業者協議会「SHIMOKITA VOICE」
 「SHIMOKITA ART LIVE」
 出演:志田歩、曽我部恵一、あがた森魚
 2007年 8月13日(日) 19:30〜 
at 下北沢ザ・スズナリ(下北沢)


七月の「もっちょむ」をきっかけに、田口と親しくなっていた。気温はジリジリと上昇、東京の”異常な暑さ”に道産子の田口は参っている。「東京は暑い」「部屋が暑い」「外が暑い」「駅が暑い」「道が暑い」「ともかく暑い」(わかった、わかった)。居酒屋でビールや焼酎をあおり、音楽のこと、これまでのこと、これからのこと、映画や政治、本やアート…取り留めなく話す。田口は人並み以上に不器用で純粋、そして夏より熱かった。同じ話が100万回繰り返される頃は、いつも終電近く。「ぐでんぐでん信号」も点滅中だ。この男、そろそろ駅に置いて帰ろう…

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そんな日々、下北沢での「SHIMOKITA ART LIVE」が近づこうとしていた。大きなステージ、あがたさんとの共演。田口は別の心配事にナーバスになっていた。北海道時代から可愛がってきた後輩、K君のことだ。K君は小さな夢を抱えて上京したものの、頼る肉親もおらず、家も職も決まらない。金も尽きて自暴自棄に陥っていた。田口は部屋に迎えたいものの、アパートの事情が許さない。心配のあまり、K君を「怒鳴ってしまった」。ひどく落ち込んでいた。

ライヴ当夜。K君は田口の付き人としてライヴ会場に入ったが、いたたまれずに楽屋を飛び出していく。K君の不在に気付き、開演直前の田口は動揺する。しかし、ステージで心の揺れは見せられない。「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」「大寒町」…田口は懸命に歌い、演奏を続けた。特にラスト、あがた森魚と曽我部恵一の伴奏を独りで奏でた「たそがれる海の城」。その情感たっぷりのギターは素晴らしかった。客席脇に立っている私をスタッフだと思ったのか、女性客に声をかけられた。「今の曲、何という曲ですか?!」…会場にも心が伝わっていた。

2日後、行方不明のK君から連絡が入り、田口は胸を撫で下ろす。「田口さんの仕事があんまり凄くて…」すまなそうに呟いたK君。下北のステージは観ることはできなかったが、彼なりに眩しい星を摑まえていた。

K君は頑張りを見せ、その後新しい職に就いた。
田口もまた、K君をソロライヴに招待する日を誓い、一歩先へと踏み出した。

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by mahiru1226 | 2007-10-26 12:01
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