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今宵、地球の片隅で



★「あがた森魚VSイワオの裏庭」

2007年11月25日(日)
開場 18:00 開演 19:00〜
出演 あがた森魚(Vo., A.G.)光永 巌(Vo., B.,A.G.)
田口昌由(B.,A.G ,Co)石坪信也(Dr.)
ライオンメリー(Key.Acco)木村林太郎(Irish Harp)
熊谷太輔(Per.)
at 新宿・New Bury(西新宿)


ビルの隙間にオブジェのような満月が浮いている。冬の新宿、大ガードを潜り、少し歩いた歩道橋のふもと、仄かな光が灯り、ライヴメニューが掲げられていた。あがた森魚と田口に続き、光永巌率いるバンドメンバーの名が連なる。心躍るワンナイトセッションだ。

急な階段を下ると小さな店内はすでに満杯。互いの息づかいに触れそうな程、ステージと客席との距離が近い。19:00過ぎ、光永 巌(Vo., B.,A.G.)、石坪信也(Dr.)、ライオンメリー(Key.Acco)、木村林太郎(Irish Harp)、熊谷太輔(Per.)がステージにあがった。刻まれるリズム、初めて聴くアイリッシュハープ。ライオンメリーが自由自在にアコーディオンを重ね、アコースティックな生音が、無国籍な情景と乾いた潮風を連れてくる。

20:00過ぎ、9曲を演奏した光永バンドが一旦下がり、帽子を眼深に被ったあがたさんと、黒いジャケット姿の田口がステージへ。MCからの「ろっけんろおどを行くよ」でウォーミングアップ。「くるりくるり」では熊谷大輔のパーカッションが加わり、今宵の加熱を暗示する。田口のベースは「SexiSexi」でエンジン加速。コーラスに入った光永巌とのかけあいから、ムーンライダーズの名曲「くれない埠頭」へ。田口は状況を読み、重ねるコーラスのオクターブの上下や演奏のインアウトの微調整を図る。この曲では敢えてユニゾンのコーラスを選び、メロディラインと歌詞を強調した。

「あともう一回だけ」は、あがた森魚のソロ。呼吸を潜めた最初の一声。いつも背中がゾクリとする名曲だ。雷蔵からの「月食」。ステージが狭いため、光永さんと田口は互いのギターとベースを一本ずつ用意し、交替で使用。ストラップの長さを調節する暇もない。田口はネック太さもポジションも違う借り物のベースで、難しいフレーズに挑んだ。

ステージにメンバー全員が勢揃いし、メインセッションへ。ポップで楽しい「コズミックサイクラー」で盛り上がった後、「ノヴァリスの青い花」では光永さんがボーカルをとった。緩やかな6/8拍子、アイリッシュハープの甘い音色が美しい。ここで田口のギターに注目する。「ノヴァリス〜」 を収録した絶盤アルバム「ピロスマニア海にいく」が用意できず、田口が音源を聴き始めたのは前日夕方。しかし、田口は難易度の高い新曲を軽やかに弾きこなす。

「サブマリン」。あがたさんと二人のライヴでは基本ラインに徹する田口も、バンドでは水を得た魚のように自由に”遊び”、派手なギターアクションでグルーヴを散らす。渋く高度な間奏から、ラストのアカペラのユニゾンコーラスへ。「ホテル、花屋、カフェ、シアターに、床屋灯りともし出す頃!」 心憎い程、歯切れよくキメてしまう男たち。

アイリッシュハープとキーボードからインする「百合コレクション」。あがた森魚はハンドマイクで歌に徹する。少し掠れた歌声の強烈な磁力と破壊力。今日のあがた森魚は心震えるほどにカッコいい。イギー・ポップに似ているのではなく、ミック・ジャガーに近いのでもなく、輪廻する世界の音楽を自らに幻視する、あがた森魚自身が唯一無二なのだ。

メンバーがあがた森魚の挑発に乗った。それぞれが最強のアプローチで絡み、ひとつのサウンドへ昇りつめては、素晴らしいセッションを醸し出す。パーカッションの熊谷大輔がこぼれる笑顔を見せた。田口と同じ北海道十勝から上京した29歳が、答えを自身に確信した瞬間だ。それは10年前にあがた森魚と出会った田口の姿でもあった。

いつだったか、田口は飲みながら語っていた。敬愛するクラッシュのジョー・ストラマーを生で観られなかった痛恨、ビートルズと時代が僅かにずれた痛恨。しかし、酔いが進むとこうも言うのだ。「俺はあがた森魚と出会い、音楽を共有できる。それは、なんて幸運なことなのだろう!」…

1960年代冬。きっと、リバプールのキャバーンクラブには今夜と同じ空気が流れていた。時空を超えて、田口はジョーやジョン・レノンと同じ熱をすでに共有している。アンコールは「いとこ同志」。さらには熱狂するお客に応えての「大寒町」、ラストの「ブリキ・ロコモーション」へ…

ニューヨーク、パリ、ローマ、リスボン、ロンドン、リオデジャネイロ…そしてトウキョウ。今宵も地球の片隅で音楽が流れる。人々は集い、歌に心を委ね、街の上には煌々と満月が輝く。2007年、冬の夜だ。



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by Mahiru1226 | 2007-12-05 00:39